○障がいを理由とする差別の解消の推進に関する南さつま市職員対応要領

平成29年6月30日

訓令第10号

(趣旨)

第1条 この要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定、以下「基本方針」という。)に即して、法第7条に規定する事項に関し、南さつま市職員(以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。

(不当な差別的取扱いの禁止)

第2条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障がい(身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がいをいう。以下同じ。)を理由として、障がい者(障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。以下同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利利益を侵害してはならない。そのため、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。

(合理的配慮)

第3条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)をしなければならない。そのため、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。

(監督職員の責務)

第4条 職員のうち、課長相当職以上の地位にある者(以下「監督職員」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障がいを理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施するものとする。

(1) 日常の執務を通じた指導等により、障がいを理由とする差別の解消に関し、所属職員の注意を喚起し、障がいを理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。

(2) 障がい者及びその家族その他の関係者(以下「障がい者等」という。)から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等(以下「相談等」という。)があった場合は、迅速に状況を確認すること。

(3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、所属職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。

2 監督職員は、障がいを理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処するものとする。

(相談体制の整備)

第5条 職員による障がいを理由とする差別に関する障がい者等からの相談等に対応するため、市民福祉部福祉課(以下「福祉課」という。)に相談窓口を置く。

2 福祉課は、障がい者等から相談内容となる事実の詳細その他必要な情報を聴取し、障がいを理由とする差別を行ったとされる職員の監督職員に連絡し、第4条第1項第2号及び第3号に掲げる事項の実施を求めるものとする。

3 福祉課は、障がい者等からの相談等を受ける場合は、相談者の性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファックス、電子メールに加え、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。

4 福祉課は、第1項の相談窓口に寄せられた相談等及び第4条第1項第2号に規定する相談等を集約し、以後の相談等において活用できるよう、相談者のプライバシーに配慮しつつ、職員間で情報共有を図る手段を講ずるものとする。

5 福祉課は、第1項の相談等があった場合は、その相談内容、不当な差別的取扱いをした又は合理的な配慮を欠いた職員の所属、職務、氏名を総務企画部総務課へ報告するものとする。

6 前項の場合において当該職員は、障がい者等からの相談内容の事実、正当性の有無及び過重な負担の有無等に照らし、懲戒処分等に付されることがあるものとする。

(研修・啓発、相談等)

第6条 障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行うものとする。

2 職員は、個別事案に関して障がい者の意思の表明を把握することが困難な場合、提供すべき合理的配慮の手段・方法が特定できない場合などは、随時に福祉課へ相談を行い、助言を受けるものとする。

この訓令は、平成29年9月1日から施行する。

別紙

第1 不当な差別的取扱い

不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障がい者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じであるにも関わらず障がい者でない者より不利に扱うことである。

1 正当な理由

正当な理由に相当するのは、障がい者に対して、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合とする。

南さつま市(以下「市」という。)においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障がい者及び第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び市の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するものとする。

職員は、正当な理由があると判断した場合には、障がい者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。

なお、「望ましい」とは、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(以下この別紙において同じ。)。

2 不当な差別的取扱いに当たる場合

障がい者の権利利益を侵害する次の行為とする。

(1) 障がい者に対して、正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する。

(2) (1)の提供に当たって場所・時間帯などを制限する。

(3) 障がい者でない者に対しては付さない条件を付ける。

3 不当な差別的取扱いに当たらない場合

障がい者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いとはしない。

(1) 障がい者を障がい者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)。

(2) 法に規定された障がい者に対する合理的配慮の提供による障がい者でない者との異なる取扱い。

(3) 合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状況等を確認すること。

4 不当な差別的取扱いの具体例

不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、この例は、正当な理由がないことを前提としており、記載された具体例だけに限られるものではないことに留意すること。

(1) 障がいを理由に対応の順序を後回しにする。

(2) 障がいを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。

(3) 障がいを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。

(4) 事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障がいを理由に来庁の際に付添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付添い者の同行を拒んだりする。

(5) 障がいを理由に窓口対応を拒否する。

第2 合理的配慮

合理的配慮とは、「障がい者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている(「障害者の権利に関する条約」第2条)。

これを踏まえ、行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行う必要がある。

また合理的配慮は、障がい者の受ける制限が、障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずる、いわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障がい者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するために必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものとする。

1 合理的配慮を行う場合の留意事項

(1) 市の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。

(2) 障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること。

(3) 事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと。

2 合理的配慮の多様性

(1) 障がいの特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、障がい者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「6 過重な負担の考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応しなければならない。

(2) 合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものであり、合理的配慮の提供に当たっては、障がい者の性別、年齢、状態等に配慮する必要がある。

(3) 合理的配慮を必要とする障がい者が多数見込まれる場合、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につなげるよう努めなければならない。

3 障がい者等の意思の表明

(1) 障がい者の意思の表明が、言語(手話を含む。)、点字、拡大文字、筆談、実物の提示、身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)を用いて行われることに留意すること。

(2) 知的障がいや精神障がい(発達障がいを含む。)等により本人の意思表明が困難な場合に、障がい者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う場合も前号同様に留意すること。

(3) 意思の表明が困難な障がい者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合で、意思の表明がない場合であっても、当該障がい者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、当該障がい者に対して適切と思われる配慮を提案し、建設的に対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましいこと。

4 合理的配慮の変更・見直し

合理的配慮は、障がい者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報の利用のしやすさの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障がい者に対して、その状況に応じて個別に実施されるため、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は変更されうる。また、障がいの状態等が変化することもあるため、特に、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。

5 事務事業を委託する場合

市がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障がい者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、要領を踏まえた合理的配慮の提供について付すよう努めることが望ましい。

6 過重な負担の考え方

個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するものとする。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障がい者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。

要素

判断の基準

事務事業への影響の程度

事務事業の目的・内容・機能を損なうか否か

実現可能性の程度

物理的・技術的制約、人的・体制上の制約

費用・負担の程度

予算措置の有無、予算執行の可否、費用・負担の大小

7 合理的配慮の具体例

合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。

なお、記載した具体例については、前記で示した過重な負担が存在しないことを前提としており、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意すること。

(1) 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例

ア 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。

イ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。

ウ 目的の場所までの案内の際に、障がい者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障がい者の希望を聞いたりする。

エ 障がいの特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。

オ 疲労を感じやすい障がい者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障がい者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。

カ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障がい者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。

キ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障がい者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。

(2) 合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例

ア 筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。

イ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。

ウ 視覚障がい者に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。

エ 視覚障がい者に説明する時には、「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」などと具体的に説明する。

オ 意思疎通が不得意な障がい者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。

カ 駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。

キ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。

ク 比喩表現等が苦手な障がい者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。

ケ 知的障がい者から申出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。

コ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚障がい者や知的障がい者に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。

サ 会議の進行に当たっては、職員等が障がい者の障がいの特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。

シ 高次脳機能障がい者に重要なことを説明する時は、自分でメモをとってもらい、双方で確認する。

ス 発達障がい者に説明する時は、(「○○をしましょう」といったシンプルな伝え方、その人の興味関心に沿った内容や図・イラストなどを使って説明するなど)肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫をする。

セ 精神障がい者は、一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心掛ける。

(3) ルール・慣行の柔軟な変更の具体例

ア 順番を待つことが苦手な障がい者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続順を入れ替える。

イ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障がい者の順番が来るまで別室や席を用意する。

ウ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。

エ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。

オ 市の庁舎や施設の敷地内の駐車場等において、障がい者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障がい者専用とされていない区画を障がい者専用の区画に変更する。

カ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該障がい者に説明の上、障がいの特性や施設の状況に応じて別室を準備する。

キ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障がい者の理解を援助する者の同席を認める。

障がいを理由とする差別の解消の推進に関する南さつま市職員対応要領

平成29年6月30日 訓令第10号

(平成29年9月1日施行)